Wednesday, May 26, 2010

インドの個人発明家Suprio Das 適正技術開発の落とし穴

遠藤です。
D-labは一ヶ月間、インドのカルカッタで活躍している個人発明家Suprio DasをMITに招き、学生の指導にあたってもらいました。彼の滞在中に、なぜ彼がいまの仕事をし始めたのかという話を聞く機会を得ました。


彼は、現在は個人発明家として活躍しておりますが、元々は地元の企業でエンジニアとして働いていました。地元の大学で電気工学を学んだ後、1980年から20年間、主に電気系統のケーブルを作る仕事をしていたそうです。日々の暮らしの中で、毎日のルーチンワークや、自分達の作る製品が裕福な人のためにしか使われないことに疑問を持ち、2000年、カルカッタ周辺の貧困層に属する人々を助ける為に、安定した職を自分から手放し、発明家としての道を選びました。

彼はこれまでに様々なプロジェクトに携わってきましたが、話をした後にもっとも印象に残ったのはDomestic Lightとよばれるプロジェクトでした。



このプロジェクトは、リキシャとよばれる人力三輪車に充電器をとりつけ、昼の間に充電されたバッテリーを夜の明かりにつかうという発明で、現在でもさまざまな村で使われているようです。このような起業家精神あふれる発明家が現地から生まれる例はあまり多くなく、D-labの学生も多くのことを学びました。また彼自身も非常に好奇心旺盛で、D-labの持つ技術すべてに興味深々に聞き入っていました。

笑顔を交えながら会話をしているといきなり真剣な目で、
「Ken、D-labはすばらしいものを作り続けているが、いまD-labのメンバーに必要なのは作ったものに責任をもつことだ。」
といい始めました。それから実際に起こった昔の話をしてくれました。

1970年代、カルカッタの近くの村にはきれいな飲料水を確保することが難しく、村人はバクテリアをたくさん含む水たまりの水を飲んでいたそうです。当然、体に良いわけはなく、特に子供の健康状態は非常に悪かったのです。そこで、WHOと政府が協力して村に井戸をつくり、地下のきれいな水を組み上げるポンプを設置したのです。当時はそれで問題が解決されたと誰もが信じたそうです。

数年後、その水にはヒ素が多く含まれていることが判明し、多くの人が命を落とし、あるいは後遺症に苦しんだそうです。WHOや政府は終了したプロジェクトのフォローアップを全くせずに、村人は仕方なく水たまりの水を再び飲み始めたそうです。

「おれはその話を聞いて、自分で技術を提供できる発明家になろうときめたんだ。」

本当に身が詰まる思いをしました。資本主義の原理が働く先進国では、だめなプロダクトは淘汰されますが、途上国ではそれが唯一のオプションになってしまう可能性があるのです。もしそのプロダクトが使用者の生死に関わる問題を抱えていたら、使用者全員を危険にさらしてしまうことになるのです。
私の場合、義足をつくるということは、ある意味患者の命を預かることと同じことなのです。

途上国向けのものをデザインする上で重要なものは何かと最近聞かれました。私は、目の前の人を助けようと思う気持ちと命をも預かるという責任感を持つことだと思います。

彼と話をしていて、自分のやっていることの重要性と危険性を再確認しました。彼はすでにカルカッタに戻って、水のくみ上げ装置のプロジェクトに携わっているようです。インドに今度行くときにはカルカッタにある彼の工房に行こうと思っています。

Tuesday, May 25, 2010

IDEAS competition結果

遠藤です。
先日MITのIDEAS competitionの結果が発表されました。我々のプロジェクトは残念ながら無冠に終わりましたが、受賞したプロジェクトはさすがに完成度が高いものばかりで、すでに起業したものも少なくありませんでした。

IDEAS competitionで受賞されたプロジェクトはここで見ることができます。
以前紹介したperfectsightも受賞されています。

この中で最も大きな賞を受賞したのがKonbitとよばれるプロジェクトです。このプロジェクトはメディアラボのクラスの中から生まれたもので、ハイチの地震の後の復興を支援するためのサービスです。このサイトでは、現地の人々のがどのようなスキルをもっているかを登録することができ、それをみた赤十字のような国際NGOが復興のための人材確保に使うことができるようになっています。
またD-lab Healthから生まれたDeNovoMeterは、血糖値を安価に手軽に計測できる紙を発明しました。インシュリンを投与している糖尿病の患者は毎回血糖値を計測しなければなりません。そのときにインシュリンの量は血糖値によって変える必要があるからです。万が一インシュリンの量を間違えると死に至る危険性もあるのです。まだまだプルーフコンセプトのものしか見れませんでしたが、将来性が評価されたのだと思います。

ほかにもおもしろいプロジェクトはたくさんありましたが、評価基準が年々変わってきたような気がします。当初はアイデアのプロトタイプを重視していましたが、最近ではプロトタイプの作り込みよりも、100Kのようにビジネスプランをよく練る必要があるように感じます。これはスポンサーの意向や、ジャッジする人がビジネス出身の人が多いからだという説明を最近聞きました。来年参加予定の方、ぜひ参考にしてみてください。

Sunday, May 9, 2010

世界を変えるデザイン展についてのお知らせ

こんにちは。
東工大の原口です。

今回はイベントの告知をさせていただきます。
それは、『世界を変えるデザイン展』です。

自己紹介でも述べたとおり、私は「世界を変えるデザイン」という本にとても感銘を受けました。
この本に出会う前、東京工業大学の国際開発工学専攻に入学することは決まっていましたが、とても不安でした。
というのも、当時自分の頭の中には技術からのアプローチはODAによる技術協力のようなイメージしかなく、アプローチ方法としてこれが自分のやりたいことなのか分からなかったからです。

そんな中、偶然この本に出会い新たなアプローチ方法を知りました。
それは、シーズありきではなく、現場のニーズをとことん追求してイノベーションを起こし、現場に一番フィットするような技術、いわゆる適正技術を駆使したプロダクトをデザインして途上国開発していくというアプローチです。
言われてみれば、考え自体当たり前といえば当たり前です。しかし、真のニーズを正確に把握することがどれだけ大変か、ニーズを満たすプロダクトをデザインすることがどれだけ大変か、ビジネスとして回すことがどれだけ大変か、とそう単純ではないはずです。
このような問題をイノベーションを起こして乗り越えようとしている、世界を変えようとしている、プロダクトが実際にあることを知れたのは自分にとって大きな気づきになりました。

そして、今回『世界を変えるデザイン展』が開催されます。
実際に途上国の現場で使用されている適正技術のプロダクトを見ることのできる絶好の機会です。おそらく、同時にこれほどのプロダクトを見れる機会は他にないと思います。
また、カンファレンスでは現場の第一線で活躍されている方が海外から来て講演をされます。


ぜひ、皆さま足を運んでみてはいかがでしょうか?
技術によって世界がどのように変ってるいるか垣間見ることができるはずです。


以下、世界を変えるデザイン展の告知となります。
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「世界を変えるデザイン展~Imagine another life through the products~」開催のお知らせ


生きていくためのデザイン。生きる世界を変えたデザイン。


発展途上国に住む人々が直面する、さまざまな課題を解決してきた”デザイン”を紹介する
「世界を変えるデザイン展」。
第一回となる本展は「現地の人びとの生活視点や発想」を出発点に、
約80点のプロダクトデザイン、プロジェクトを紹介します。


先進国におけるデザインは世界総人口のほんの10%を対象にしているに過ぎません。
これからのデザインは、その他90%の人びとのニーズに目を向け、彼らの生活水準を向上させ、
自尊心に満ちた生活を提供する使命をもっていると、私たちは考えています。


本展は、発展途上国に存在する課題を[water][food][energy][health][housing][mobility][education][connectivity]の
8つに分類しました。
そして、これらの課題を解決し、新たな市場や雇用を生んだプロダクトにフォーカスします。


1日平均収入が2ドル以下の発展途上国の人びとに対して、デザインができることは何か。
どんなデザインが求められているのか。
会場の多くの事例から、そのヒントを見つけていただければ幸いです。


東京ミッドタウン・デザインハブでは、現地の人々の生活を向上させ、ビジネスモデルとして
実績をおさめているプロダクトを展示、
アクシスギャラリーでは、大学や団体による取組を含め成功事例のプロセスや背景、
進行中のプロジェクトも併せて紹介する予定です。


さらに、会期中、海外より研究者などを招聘し、カンファレンスやワークショップを開催予定です。
国内外より、BOPに関する研究者、デザイナー、途上国NGOの方々など
幅広い分野の方々をお招きして講演やワークショップを実施致します。
皆様ふるってご参加ください。

□展覧会名称:「世界を変えるデザイン展~Imagine another life through the products~」
□入場料 : 無 料 (※カンファレンス・ワークショップは別途参加費を頂きます)
□主催:世界を変えるデザイン展実行委員会、日本財団、特定非営利活動法人CANPANセンター
□会場と会期(2会場の会期は異なります):
◉東京ミッドタウン・デザインハブ(港区赤坂) 共催:東京ミッドタウン・デザインハブ
5月15日(土)~6月13日(日) 11:00 - 19:00
◉アクシスギャラリー(港区六本木) 共催:アクシスギャラリー
5月28日(金)~6月13日(日) 11:00-19:00(最終日は17:00まで)
□特別協賛:大和証券株式会社
□協賛:SEITOKU株式会社
□後援:アメリカ合衆国大使館、オランダ王国大使館、ブリティッシュ・カウンシル、JICA、
独立行政法人中小企業基盤整備機構
□協力:ロイヤル フィリップス エレクトロニクス、デルフト工科大学、英治出版株式会社、
ソニー株式会社、平和紙業株式会社、株式会社山田写真製版所、岡崎製材株式会社、
株式会社丹青社、武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科、国際協力NGOジョイセフ、
社団法人シャンティ国際ボランティア会、プラン・ジャパン、ジュレー・ラダック
□企画協力:アクシスギャラリー、(財)日本産業デザイン振興会
□運 営:株式会社Granma
□会場構成:芦沢啓治建築設計事務所、DRILL DESIGN、橋本潤
□グラフィックデザイン:中野デザイン事務所、河原健人
□プロダクト写真:尾鷲陽介
□Web制作:株式会社トナリ
□運営:株式会社Granma
□お問い合わせ(株式会社Granma内):Tel.:03-3793-7210
URL:http://exhibition.bop-design.com/
E-mail:sekai_design@granma-port.jp
Twitter:http://twitter.com/sekai_design




※注1:CANPANセンターとは、民(NPO)、産(企業)、学(学術団体)の活動を支援し、
三者の連携を促進することにより民間主体のより豊かな社会づくりに貢献する特定非営利活動法人。
※注2:BOPとは、「所得別人口構成のピラミッドの底辺層を指す。
世界人口の約7割に相当する約40億人が、年間所得3000ドル未満の収入で生活しており、
その市場規模は5兆ドルに上ると言われる。
BOPビジネスとは、企業が途上国においてBOP層を対象にビジネスを行いながら、
生活改善を達成する取組のことである。
慈善事業ではなく、持続可能性のある本業のビジネスとして行う点において、
CSR活動をさらに発展させたものと言える。」(経済産業省ウェブサイトより)

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Thursday, May 6, 2010

AmyがTime100に!

もうお気づきの方も多いかもしれませんが、、MIT D-Labの創始者Amy Smithが2010 Time 100に選ばれています。素晴らしいですね。記事は、こちらをご覧ください。