今回10日間日本に滞在しましたが、そのうち5回もイベントに招待していただき、たくさんの方々にお会いする機会がありました。D-labのような「技術開発」と「国際開発」の2つの異なる「開発」を組み合わせた試みは日本では新鮮に見えるようで、多くの方に興味を持っていただきました。その中で一番多かった質問のひとつが「適正技術とはなにか?」というものでした。おそらく様々な団体が少しずつ異なる定義をしているかと思いますが、ここではD-labで教えている適正技術について紹介したいと思っております。多くの情報がD-labの教科書として使われている"Mastering the machine revisited: Poverty, aid, and technology"から学んだものです。
適正技術(Appropriate Technology)はもともとは中間技術(Intermediate Technology)という名前で、Ernst Friedrich Schumacherによって提唱されました。彼は名前から予想できるようにドイツ生まれですが、後々イギリスにて有名なEconomic Plannerとして活躍しました。戦後の復興活動の中で、高度な近代技術を用いた暴力的な援助が成功しないことから、ハイエンドでもローエンドでもない中間に存在する技術が、多くの雇用を生み出すということを述べ、中間技術の重要性を述べています。さらにSchumacherは仲間とともに非営利団体Intermediate Technology Development Group(ITDG)を立ち上げ、中間技術の普及に努めたのです。1960年代のことでした。のちにこれらのコンセプトは"Small is Beautifle"という書籍にて発表され、後の適正技術へ続いていきます。
その後、時代と共に戦後復興から途上国開発へと意味合いが変わり始め、中間技術という言葉が一般化されるようになりました。そして、中間技術という言葉は
- 小型
- 単純
- 安価
- 非暴力
そこで、Schumacherの死後、ITDGを引き継いだGeorge McRobieらは4つの特徴を引用しつつ、新しい適正技術という言葉を使うようになりました。適正技術とは
- コミュニティーの多くの人が必要としている
- 持続可能性を考慮した原材料、資本、労働力を用いる
- コミュニティーの中で所有、制御、稼働、持続が可能である
- 人々のスキルや威厳を向上させることができる
- 人々と環境に非暴力的である
- 社会的、経済的、環境的に持続可能である
technologies designed to suit the needs of the community it is intended for, being culturally sensitive, environmentally responsible and spreading productive employment opportunities.
と紹介されております。
これらの定義の他にもさまざまな団体(OECD、GRET、ATIなど)が適正技術に関する議論をしておりますが、個人的には言葉の定義に関して、最低限の定義は必要とは思いますが、細かく定義しすぎるのは無意味と思っております。大抵の団体は同じような定義をしておりますし、言葉の意味よりも行動のほうが重要だと思っているからです。
なので、「適正技術とはなんですか?」と聞かれたら、D-labのwebsiteのように「現地のニーズ、文化、環境、人などを考慮したうえでの、最善の技術」と簡単に説明させていただいてます。
参考文献
Ian Smillie, "Mastering the machine revisited: Poverty, aid and technology", Practical Action Publishing, 2000
E. F. Schumacher, "Small is beautifle", 1973
"Putting Partnership into Practice", ITDG, 1989
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