Sunday, February 6, 2011

BMVSSのJaipur Clinicにて

今回のインド訪問の最終目的地、Jaipurに来ました。ここには、BMVSSのHeadquaterがあります。ここで1週間弱、MIT-kneeのアップデート、義肢装具のためのデザインショップ設置の話、そしてMITのD-labの授業の打ち合わせを行いました。

まずは、MIT-kneeの打ち合わせ。BMVSSの創設者、D.R.Mehtaに会うなりいきなり「MIT-kneeはまだできないのか?」と突っ込まれてしまいました。彼らはStanford-kneeを既にJaipurでは配り始めており、MITからの早く実用に堪えうる試作品がほしいと言われました。現状では、テスト段階ではあるものの、New Delhiでの打ち合わせのときにいろいろな改善すべき点があったので、また再設計が必要となりました。今年の夏までにはちゃんとしたものを作りたいです。。


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D.R.Mehta自らクリニックを案内してもらった。そのあとマックのVegiバーガーを一緒にたべました。


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MIT-knee。New DelhiではExo-kneeとよばれている。一方でJaipurでは、Stanford-kneeとのツートップとして期待されていて、MIT-kneeとよばれている。正式名称はどうなるんでしょうかね。


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Stanford Knee

そして、義肢装具のためのデザインショップ設置の話。これはFablabのようなものをイメージしていたのですが、先方はモックや初期のプロトタイプよりももう少し製品に近いものを作るための加工機をイメージしていたので、Fablabでできあがるものに対して、少し不満をもっていました。おそらく、金属加工ができない点やCNCがない点など、いまの彼らの義足を作るためにアウトソーシングしているものたちを自分たちでもできるようにしたい様子。それも大事ですが、初期のプロトタイプから自分たちで作り上げる環境とMITと同じ環境を持つことのの重要さを強調し、なんとか折り合いをつける努力をしています。まだまだ落としどころがみえませんが、今後の動向が楽しみです。

最後にD-labの授業の打ち合わせ。今年も春学期にD−labの授業の一つとして、義肢装具技術の授業、Developing World Prosthetics(DWP)がはじまります。そこで学生に与えるプロジェクトの打ち合わせや、学生にJaipurfootを紹介するビデオを撮影しました。

以下に授業ですでに使った、あるいはこれから使うムービーをいくつか紹介します。


Dr. Pooja SandeepanによるJaipurfootの紹介

Mr. Sanjeev Kumar


Dr. Poojaによる患者の紹介。


HDPE(High Density PolyEthylene)のソケットづくり。バキュームをつかわず、手作業で成形している。


歩行のリハビリ。


Jaipurfoot工房。



さて、今年はどんなプロジェクトをしようか悩みどころです。。。

Saturday, February 5, 2011

インドの農村部の希望 Vigyan Ashram

Puneのワークショップが終わった次の日、同じトラックを担当したVinayakにつれられてVigya Ashramという教育期間に行きました。ここのFablabには以前三好大助が訪れ、youtubeでその映像を公開してくれました。しかし、ぼくにとっての驚きは、FablabだけではなくVigyan Ashramという組織そのものでした。


三好大助君がアップしたムービー。Vinayakも登場。

Vigyan AshramはPabalというPuneから2時間ほど車で北東に向かった村であり、主に農業を営む家族の子供を対象に2年間のプログラムで教育を行っているところです。ディレクターのYogesh氏に話を伺ったところ、 ここはただの農業を学ぶ場だけではなく、イギリスなどの企業とも連携していて、ここで学んだ若者たちがインターンを海外で行うこともできたり、そのまま就職することもあるそうです。しかし、現時点ではここで学んだ若者たちは賃金の低い労働者としてしかとらえてもらうことができないため、自分たちでテクノロジーを生み出すことのできるアントレプレナーを生み出したいという野望を持っていました。そこで、行われているのが適正技術開発でした。貯水のためのビニールシート、安価なポリハウス、ソーラクッカー、新聞紙をつかったレンガなど、IDEMITのD-labでも行われているような技術開発が現地で、しかも現地の人の手によって行われているのです。そして、それらの技術は彼らの生活の一部になっているものもありました。貯水のためのビニールシートは犬や猫が溺れるために、動物のいやがる超音波を発生するデバイスをVigyan AshramのFablabで開発中とのことでした。


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巨大なビニールシートをつかった貯水池。夏に水を求めた犬や猫が溺れて死んでしまうのが問題らしい。

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安価なポリハウス。農作物の育て方のノウハウも蓄積されている。

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そしてFablab。レーザーカッターでなにか切り出していた。

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ソーラークッカーを実際につかって、チャパッティ(なんの小さい版みたいなもの)を焼いていました

ソーラークッカーの威力。薄っぺらな紙であればすぐに火がつく。ちなみにいまは冬です。

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一酸化中毒を防ぐために、煙を家の外に出すことができるかまど。


Design Innovation Workshop in Pune

プネにあるCollage of Engineering Pune(COEP)という工学系の大学にて、MITメディアラボとCOEP共催でDesign Innovationという名のワークショップが行われました。このようなワークショップは以前にも台湾や韓国で学生主導で行われており、インドでもこのようなワークショップを行おうとしているときに、 COEPが名乗りをあげました。COEPではIITに続いて有名な大学らしく、Media labのRamesh Raskarがこの大学出身だそうです。

今回のワークショップでは合計10人のメディアラボのメンバーが参加しました。120人の枠に対して、800人以上のアプリケーションが届き、選考するだけでも一苦労でした。5日間の短期ワークショップでは、初日のデザインワークショップから始まり、Arduino, Android, Fablab, Matlabなどのチュートリアルを各学生が担当しました。デザインワークショップでは、スケッチを用いたディスカッションの手法を学び(この手法はこのクラスのマテリアルを参考にしました。)、その後バスステーションへフィールドトリップに行きました。そこで、学生たちが問題点をみつけ、それに対するソリューションを提案するところまでが、初日にタスクでした。



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バスステーションへのフィールドトリップ

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各チームによるプレゼン。現地に住んでいる彼らでさえ、クラクションをならしすぎるのは問題と思っている様子。一方で排気ガスによる環境汚染への問題意識はあまりない様子。


チュートリアルセッションでは、COEPのFablabスタッフであるSandip教授とVigyan AshramのFablabスタッフのVinayakと一緒にCOEPにあるFablabのModela, Shopbot, Lasor cutterといった加工機のの使い方を一通り教えました。

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COEPのFablab


そして、その後の3日間では参加学生の興味別に4つのトラックにわかれ、トラックのテーマにそって、プロジェクトを行いました。ぼくの担当するトラックは「Living with Machine」。このトラックでは、人間の機能向上を目指すH2.0のコンセプトに基づき、Fablabの施設をつかっていろいろテクノロジーのプロトタイプを制作しました。トラックの初日にぼくが紹介した事例が障がい者を対象にしたものが多かったためか、参加者も車いすや盲目の方のためのつえ、義手など、人間の失われた機能を補うためのテクノロジーが多かったです。チームごとにアイデアを考え、初日で学んだスケッチをつかったブレインストーミングやディスカッション方法、Fablabを駆使して、様々なプロトタイプが仕上がりました。

そして最終日には1000人以上のゲストを迎え、Exhibitionが行われました。ホールはあっというまに人に埋め尽くされて、他のトラックの発表をすべてみることはできませんでした。

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ものすごい数のゲスト

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点字のタイプライター。二つのパンチと紙を送るステッパーモータをつかった安価な仕上がり。

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持ち運びが可能ないす。これにGPS、加速時計、Arduinoをつけて消費カロリーを計算し、座るか否かを提案してくれるらしい。



Navigation Shoeのexhibition。Google map, GPSによって、くつの中に仕込んだバイブレーションモータが方向を教えてくれる盲目の方への技術。プロトタイプではLEDを仕様。


Wheelchairのexhibition。首の動きによって車いすを動かす機能。プロトタイプではマウスをハックし、センサとして使っていた。

今回、Fablabを使ったワークショップをしかもオーガナイザとして初めて経験することができ、本当に学びの多い機会となりました。Fablabはそれこそほぼすべてのプロトタイプをしかも素早く作ることができる環境です。Fablabの装置は扱うのが簡単で、しかも危険性もそれほど高くないため、短期間で使い方を習得することはできます。しかし、装置を使うことができるからといって、Fablabでのものづくりのスキルの習得としては、不十分だと感じました。そのほかにも、 自分たちのアイデアを短時間で、身のまわりにある材料のみをつかって、なるべく完成度の高いプロトタイプをつくるプロセスが重要になります。実際にMedia labでなにかものを作るときには、McmasterDigikeyなどを使って、ある程度のものがすぐに手に入る環境があるのに対し、Puneでは限られたものしか手に入りませんでした。それでも、今回のワークショップでは自分たちのコンセプトをFeasibleなプロトタイプアイデアまで落とし込み、機能的なプロトタイプを作る必要がありました。このプロセスを何回も繰り返し、問題点を取り除いていくことによってアイデアやプロトタイプに説得力が増し、イノベーティブなプロダクトが生まれるのです。ぼくにはPuneで手に入るものがどんなものなのか知らなかったし、そもそもCOEPのFablabにどんなものがどこに保管されているかも十分には理解していませんでした。ほかのスタッフは、加工機の使い方はもちろん、使いたいものがどこにあるかも知っていたので、プロトタイピングのプロセスが非常にスムーズでした。Fablabはその環境自体に注目が集まりがちですが、そのコアとなるコンセプトは、こういった地域に応じたものづくりと世界のFablabとのつながりが機能してこそ、可能性が広がるのだと感じました。

現在JaipurにFablabのような義足を作るための環境を構築しようと画策しています。Fablabはすばらしいものづくり環境でありますが、しかし一方で、自由度は低く、テストに耐えうる義足をつくることは難しいと思うのです。Fablab創設者のNeil Gershenfeldからは他のFablabとコンパチブルになるように気をつけろといわれている一方で、Jaipurfootの創設者D.R.MehtaからはLasor cutterとかよりもCNCのほうが使えるというようなこともいわれています。おそらく作る対象のプロトタイプのレベルが食い違っているので、これをどうやって落とし込むか悩ましいところです。

Thursday, January 20, 2011

BMVSSのfitting camp

遠藤です。
現在BMVSSのNew Delhiのクリニックにいます。

今回のインドの訪問では、はじめてfitting campに参加することになりました。BMVSSはインドに16個のクリニックがあり、そこに毎日数百にもの患者が訪れます。一方で足に障害を抱える人の多くは田舎の地域に住んでいるので、都市部にあるクリニックにくることが難しいのです。そのためにJaipurfootでは義肢や装具を作成する工作機械を田舎に持っていって出前クリニックを行うのです。それがfitting campと言われています。

そうはいってもすべての工作機械を持ち出すことは無理なので、様々なサイズのJaipurfootや装具の部品をあらかじめクリニックで作っておき、現地では患者の体にあわせて組み立てる作業が中心となっています。

今回のfitting campはNew Delhiから1時間ほど車で北上したDelhiとPUの州境にある場所で行われれました。fitting campは2日行われましたが、200人ほどの患者が義肢や装具を作ってもらっていました。

患者の半分以上は脊椎損傷や脳性麻痺で、足が動かないか異常に動いてしまうために装具をつけて安定させるリハビリを行っていました。こういった症状の患者は継続的なリハビリが必要となるため、2日間のcampだけではフォローアップができないとのことです。この問題は装具だけではなく、義足もJaipurfootは1年程度で壊れてしまうので、継続的なメンテナンスが必要となるのです。campで人を救うことはすばらしい活動ですが、次から次へと課題が増えるので悩みはつきないそうです。




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fitting campではプーリと呼ばれるナンをあげたようなものと、カレーが患者に配られていました。技術者やぼくもいっしょになって食べました。おいしかったです。