Wednesday, April 28, 2010

IDEAS competition judging session

遠藤です。
先日投票をお願いしたIDEAS Competitionですが、残念ながら我々のチームは6位と7位でした。(投票をしてくださったみなさん、本当にありがとうございました。)投票はIDEAS Competitionの一部であるCommunity Choice Awardのためで、メインのIDEAS CompetitionのJudging Sessionが4月26日に行われました。

IDEAS Competitionとは、100Kに並ぶMITのビジネスプランコンテストで、ソーシャルアントレプレナーに特化したコンテストです。評価には発明品に重点が置かれている為に、D-labで作られたプロトタイプをそのままコンテストに出す学生も多いのです。

今年は総勢26チームが参加し、ビジネス経験のある18名のジャッジがチームの評価を行いました。発表の形式はポスターセッションで、チームごとに3人から5人のジャッジがまわってくるというものでした。私はExo-KneeLego Legの2つのチームに所属していましたが、このセッションではExo-Kneeで発表を行いました。

Exo-Kneeとは、見た目が人の膝のように見え、さらに足が地面についているときには膝がロックされ、地面から離れたときには膝のロックが解除されるような機構を備えた下腿義足です。義足はただ売ることはできず、義足を調整するテクニシャンや他の部分を作る為の機器が必要となるために義足そのもののためだけでなくさらなる費用が必要となります。そのために我々はKopernikと協力し、義足の新しい普及方法も提案しています。
セッション中には3名のジャッジがポスターの前に来て、発表と質疑応答にそれぞれ30分ほどかかりました。残念ながら、我々のパートナーのKopernikの中村さんは引っ越し直前ということで不参加でした。質問はExo-Kneeの技術的なものから、Kopernikの実績などなかなか鋭い質問も飛び交い、正直うまく答えられたかどうかとても不安です。

他のプロジェクトをあまりみることはできませんでしたが、個人的にすごいと思ったのはPerfectSightとよばれるプロジェクトです。このプロジェクトはメディアラボカメラカルチャーというグループから生まれたものです。彼らは、ラボで生まれた技術を使って、携帯電話と組み合わせた安価な目の診断装置を作ったのです。たくさん投票を集めたところは大抵実物をみてがっかりすることが多かったのですが、このプロジェクトのプロダクトの完成度はもちろん、今後の展開にも期待できそうです。



結果発表は5月3日です。

Friday, April 23, 2010

遠藤です。
本日、MITのD-labから発表された技術公開に関するニュースを紹介いたします。
MIT D-labは、これまでに開発してきた適正技術のうちの数個をCreatives Commons Lisenceのもと、公開しました。このライセンスは、商用目的ではなく、MITが所有するものとして明記しさえすれば、無償で利用できるものです。このカリキュラム資料をつかって、”MITのクラスだけでなく、他大学、さまざまな団体、さらにはベンチャーや個人向けにオープンにすることによって、より大きなインパクトを社会に与えることが目的です。”

現在、農業廃棄物から炭を作る装置とトウモロコシの身をはぎとる装置の2種類の技術の資料が公開されています。炭を作る装置はD-lab初年度から続いているプロジェクトでDesign for the other 90%でも紹介されていますし、今年ハイチの大地震のときにも大活躍した技術です。

なお、Amy Smithはこの技術を始め,自身の活動を2006年にTEDで発表しました。



これまで、D-labは開発してきた技術を外に発表することをあまりしていませんでしたが、今年度からD-labの資料をまとめる専属のメンバーが2人雇われています。この技術公開は彼らの仕事の1つです。公開されている技術は今は2つしかありませんが、これからさまざまな技術がここから発信されていくことになります。

Tuesday, April 20, 2010

今週のThe Economist・新興国がイノベーションを牽引する時代

シンポジウムから丸1ヶ月が経とうとしており、色々なところで徐々に国際開発を技術で開発しようという取り組みが日本からも少しずつ起こってきているようです。本ブログでも、色々な取り組みをご紹介できるようにしていきたいと思っております。皆さん、今後ともどうぞ宜しくお願いします!

さて、今週のThe EconomistInnovation in Emerging Marketsに関して、14ページの非常に良く纏まった記事が出ております。さすがThe Economistだなと思わされる非常に的確に書かれた記事ですので、もし良ければ見てみてください。日本の自動車メーカーがアメリカの自動車メーカーを追い越した80年代、アメリカは「日本の成功は安い賃金と政府の補助にある」と考えていたが、蓋を開けて研究してみると在庫スペースの不足を強みに変え「リーン生産」というビジネス・イノベーションを実施していた。そして、「T型フォード」「トヨタのリーン生産」に次ぐ新たな流れが新興国から起こりつつある、と書いています。そして、今回の中印を中心とする新興国の勢いは日本が西側諸国を凌いだときよりも早く、規模が大きいことも指摘しています。その理由として1) 企業活動や人材が流動化していること、2) 日本の時のように自動車と電機産業だけではなく、殆ど全セクターで起こっていること、3) ボリュームがとにかく大きいこと(例:中印の電話会社は800-1000万人の新規顧客を毎月取り込んでいる)、4) 西側諸国の優良企業が新興市場のポテンシャルに気付いていることを挙げています。GEがバンガロールに世界最大の研究開発拠点を建設していること、GEのインドの過疎地の診療所向けに出したポータブル心電計Mac400がリバース・イノベーション(途上国の厳しい制約条件に適用するよう作られたものが、先進国でも売れる商品になる。クリステンセンの破壊的イノベーションと似たコンセプトだが少し異なる。)の一例としては有名です。これらの製品の特徴は、価格・動作条件の厳しい条件を徹底的に考え、そこに必要な技術を組み合わせて製品化に結び付けているところにあります。成長市場で売れるものは、成長市場の中で研究開発をする必要があることを再認識させられました。日本企業の研究開発は「日本人中心、国内集約」ですが、ここから途上国でのヒット商品を出すのはやはり無理がありそうです。スピード感も日本と成長市場では圧倒的に違うでしょう。ここで挙げられている例は私も知らなかったものがいくつかあり、なかなか面白かったです。

色々と読んでいて再認識したのですが、残念ながら日本企業の名前は一切出てきませんでした。世界のトップ企業500社(Fortune Global 500)のうち68社は日本企業であり、まだ世界経済に与える影響力はまだ大きいはずなのですが、成長市場で役割を果たせないということは徐々に影が薄くなってゆくということを意味しているのでしょうか。中国のBYDにオギハラの金型工場が買収されたり、韓国NHNにライブドアが買収されたりと、最近日本企業が徐々に欧米以外の企業に買収されてゆくニュースが増えている気がします。The Economistでも「リバースM&A」としてインドのHindalcoがカナダのNovelisを買収した例が出ていました。安定志向で日本の大企業に入っても、10年後の上司は中国人かインド人かもしれません。Infosys, ArcelorMittal, Embraer のような新興国発の大企業が増え、タタの自動車がアメリカの道を走る日も、そう遠くなさそうですね。

IDEAS Competition

遠藤です。MITのビジネスプランコンテストといえば100Kが真っ先に思い浮かびますが、次点で途上国向けの適正技術とそのビジネスに特化したIDEAS competitionというものがあります。今年はKopernikさんの協力もあり、義足のクラスから2つのプロジェクトをエントリーしました。

Exo-Knee Prosthesis
Lego Leg

現在Global Challenge Awardsという、webの投票で勝者が決定コンペがあり、今月の26日まで投票を受け付けております。ブログで宣伝するというのもちょっと気が引けますが、他のチームもかなり必死になっているので、我々もここでプロジェクトを紹介させていただいております。リストの中には、他にもおもしろいプロジェクトがたくさんありますが、もし気に入っていただけたらExo-kneeをよろしくお願いいたします。(投票には登録が必要ですが、MIT Friendとしてどなたでも登録できます。)

ちなみに賞金は、夏に予定しているExo-Kneeの大規模な実地試験と、その後の技術普及のために使われます。ぜひご協力お願い致します。

Thursday, April 8, 2010

Paul Polak、訪MIT

MIT遠藤です。

今週の月曜日、Paul PolakがMITのD-labの見学とDesignのクラスでの講義のためのMITに訪れました。Paulは1981年にInternational Development Enterprise(IDE)という非常に有名なNPOを立ち上げ、水の灌漑システムやポンプのような農業に必要な適正技術を使って途上国を支援しています。現在IDEは世界有数の大きな団体に成長し、活動範囲をインドからアジア諸国、アフリカ、さらにラテンアメリカにまで広げています。Paulとはfacebookやメールで何度かやり取りしたことはありましたが、実際に会うのは今回が初めてでした。

彼の講義は、スライドを使ったプレゼンテーションではなく、ただ彼が学生の前に座り、質問を受けて、自身のさまざまなストーリーを織り交ぜつつ、その質問に答えるというスタイルでした。驚くべきことは、すべての学生が彼の著書「Out of Poverty」を読んでおり、その内容に質問が集中していたことです。その中でも印象的だった質問をいくつか紹介します。

Q. 「本の中では現地のコミュニティーと対話をしなければならないとあるが、はじめていくところにはどうやってコンタクトをとるのか?」
A. 「はじめていくとしても、まったく知らないコミュニティーというのはない。常にすでに知っているコミュニティーを訪ねるのだ。どうやって知るかというと、必ず知り合いが紹介してくれる。ここで大切なのは、ここアメリカでもネットワークを大切にすることなんだ。」
この質問は日本でもよくされたものですが、D-labにいると本当にいろいろな方が話を広げてくださるので、非常にネットワークの大切さを感じます。この下地がまだ日本にはないのでしょう。この我々のネットワークは日本で個々に活動されている方々をサポートできるものの一つかと思っております。

Q. 「国連や世界銀行や政府などが援助しているにも関わらず、同じような国で活動されるのはなぜか?もっと援助が必要な国があるのでは?」
A. 「我々は大きな機関の調査を信用していない。言い方が悪いもしれないが、調査とは大抵10%の人は切り捨てらるもの。我々がやろうとしているのは、自分たちの目でみて、そこに問題があれば、その解決法を一緒に考えること。お金を援助することは必ずしも解決法ではない。」

彼は話の中で"How much they can afford to pay for what?"という言葉を何度も繰り返しました。例えば、農業で必要な水のくみ上げポンプは初期投資は彼らにとって高価かもしれないけれども、農作業の効率が上がり、作物の売り上げもあがれば、彼らは購入する必要があるというのだ。その結果、彼らの生活水準が向上するのだと。Paulは、最終的には寄付や援助に頼らず、彼らを自立させ、一定の経済レベルにまで押し上げることを常に考えているのです。

Paulの話を聞いて、D-labの創設者であるAmy Smithが彼から非常に大きな影響を受けていることを感じました。とくに、実際に現地に行かないと適正技術は作れないと言い切るくらいにまで、現地の人々との対話を重要視するところは、ニーズを理解しそのソリューションを生み出すプロセスを重視する、まさにエンジニアの魂であると感じました。

この夏、Amy Smithが主催するInternational Development Design Summitという学生向けのイベントが7/7から30まで開催されます。毎年適正技術を学び、考えることを行ってきましたが、今年は普及方法に着目し、現在すでにある適正技術を現地に根付かせる方法を提案することを目標にしているようです。場所がコロラドというのも、Paul Polakが現在コロラドに在住しており、彼の参加を呼びかけたことから決まったようです。(このようなイベントに日本の学生も参加すべきであると思うのですが、時期が期末試験と重なる大学が多いことから、難しいとの反応を受けたことがあります。)

授業のあと、簡単に私の授業の紹介と義足を紹介させていただきました。今後普及のネットワークに協力していただけることになりました。我々がもともと義肢装具の研究者であることにもおどろいていただき、エンジニアがこのようなことに目を向けることが大事であるとおっしゃっていました。まさに私が目指すところです。